農業参入を志す方が、農地利用の権利を得るためには、なんらかの役所の関与が必要となります。代表的なものは、農業委員会の許可を得る農地法3条の利用権設定ですが、ここでネックとなるのが、いわゆる50a要件というやつです。この50a要件は、通称「下限面積要件」ともいわれ、市町村に別段の定めがなければ、50a(北海道は2ha)以上の農地利用に至らない場合には、その者に権利を許可しない、という規定です。
この規定の制定された当時、戦後間もない頃の農業の常識では「なりわい」足りえる最低限の耕作面積を就農条件にすることには一定の意味があったのでしょうが、現代のように、一定の資本を要するものの工場のような集約型農業においては、農地は3次元に利用され、過剰に広大な敷地は、むしろ管理負担がとなるだけの経営上の足枷です。
実際に、上記のような先進施設型の農業では、土地1㎡あたりの生産量は、露地栽培のそれと比べて数倍から数10倍に至ることも珍しくありません。
しかし、どの地方の自治体でも、この「50a要件(下限面積要件)」は、鬼の首をとった如く必ず最初に立ちふさがる壁になります。
なお、この要件については、農地法施行令できちんと理論的に免除規定が設けられているのですが、私は、役所の人で農地法施行令までストレートに対応できた人にあったことがありません。
令和2年にわざわざ農水省から自治体に宛てて通達もでているのですが…。
新規就農支援のご依頼をいただいた場合、就農予定自治体に対してロジカルに説き伏せてゆくわけですが、一度掲げた50a要件の御旗をそう素直に間違っていましたとおろせる役人さんは多くないですから、なかなか引かせ方は難儀します。
さて、そんな下限面積要件。この度の法改正で削除されるようですが、逆に条例で下限面積要件をつくるなんて噂もちらほら…。果たして現場はどう対応するのでしょうか…。
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